イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
◇二人で一緒に
あのあと、家に帰ってからもわたしはずっと上の空だった。
家事にも、全然身が入らなくて。
「痛っ」
夕飯用の野菜を切っているとき、ボーッとしていたわたしは、誤って包丁で自分の指を切ってしまった。
左手の人差し指に、じわじわと赤い血が滲む。
いつもなら、こんなミスなんてしないのに。
目からは勝手に冷たいものが滑り落ち、頬を伝う。
「……っう」
痛いけど、今は指よりも胸のほうが何倍もズキズキと痛い。
慧くんのお母さんには、つい感情のままに別れないって言ってしまったけれど。
時間が経ってもう一度冷静によく考えてみると、慧くんや家のためにはやっぱりわたしは彼と別れたほうが良いのかもという思いが強くなってくる。