イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
わたしたちの会話が聞こえていたのだろうか。
明るめの茶髪で制服も少し着崩している男子が、声をかけてきた。
「俺らも今から、駅前のカラオケに行くんだけど。良かったら、親睦も兼ねて一緒に行かない?」
え!?
声をかけてきた茶髪くんの後ろには、更に男子が2人。
「えっ、うそ。やばい! あの人、大翔に似てるんだけど!」
男子3人のうちのメガネをかけている子が、真織がずっと応援している俳優の大翔くんに似ているらしく、キャーキャー言っている。
「ねぇ、依茉、杏奈! あたし、あの人たちと一緒にカラオケ行きたい」
え!?
「大翔似の男子と、お近づきになりたいの」
手を合わせて頼み込んでくる真織に、わたしは杏奈と顔を見合わせる。
今朝、お兄ちゃんには『学校で男に声をかけられても、絶対について行ったらダメだぞ』って言われて。
わたしも失恋したばかりだから、男の子とは必要最低限しか関わらないって思っていたけど。
「ねっ、お願いっ!」
こんなにも頼み込んでくる真織は、初めてかもしれない。
わたしは、杏奈とお互い頷き合った。
「まおりん、いいよ」
「せっかく声かけてもらったし、みんなで行こうか」
「やった! 2人ともありがとう〜!」
これは、大事な友達である真織のため。そして、クラスメイトと仲良くなるため。
そう自分に言い聞かせながら、わたしは皆と一緒に教室を出た。