イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「こっ、こんにちは……一堂さん」
一堂さんを前にするとどうしても声が震え、心臓が早鐘を打つ。
「こんなところで何をしているの? この間、もう二度と私の前には現れないでって、あなたに言ったわよね?」
「はっ、はい。ですが、一堂さんともう一度話がしたくて」
一堂さんの眉間には、皺が寄る。
「あなたと話すことは何もないわ。口を利くつもりもないから」
「だったら、せめてこの手紙だけでも……」
こうなることを想定していたわたしは、一堂さんに手紙を書いてきていた。
「そんなもの、受け取れるわけがないでしょう」
わたしが白い封筒を差し出すも、一堂さんにパシッと払いのけられる。
「あ……」
払いのけられたそれは、午前中に降り続いた雨でできた水溜まりに落ちて濡れてしまった。
やっぱり、そう簡単にはいかないよね。
わたしは唇を噛み締め、一堂さんの背中を見据える。
「でも、わたし……慧くんのことは、本当に好きなので。ご両親に認めてもらえるまでは、絶対に諦めませんから」
一堂さんはこちらを一切見ることなく、家へと入ってしまった。