イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「……いや。ただでさえ、親から電話でしょっちゅうお見合いしろとか、依茉とはまだ別れないのかって言われるから。家に帰りたくない」
「そっか……」
話によると慧くんは、わたしとご両親が初めて会ったあのパーティー以来、実家には一度も帰っていないらしい。
「それに、依茉とのことを親に認めてもらうまでは、あの人たちとはなるべく会わないでおこうと思ってて。自分の彼女のことを悪く言われたら、いくら相手が親でも許せないだろ」
もし、わたしのせいで慧くんにそんなことを言わせてしまっているのだとしたら……すごく悲しい。
「でも、そう言わずに……たまには実家に帰って、ご両親に慧くんの元気な顔を見せてあげてね? わたしは……父親に会いたくても、もう会えないから」
わたしがそう言うと、慧くんがハッとした顔になる。
「依茉が母に門前払いされたって聞いてからは、余計に腹が立ってしまって。実家になんか帰るもんか! って、思っていたけど……やっぱり、それじゃダメだよな」
慧くんが、少し悲しげに笑う。
「分かった。近いうちに一度帰るよ。それで俺からも依茉とのことを、親にもう一度ちゃんと話してみる」
「うん」
慧くんに微笑むと、わたしは英語の問題集に取り組み始めた。