イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 初めて実家のパーティーで両親と対面したときも、母親が依茉に俺と別れるよう言ったときも。


 依茉は、俺の親からの心ない言葉に沢山傷ついたはずなのに。


 そんな両親のことを『大切な人』と言える依茉は、すごいな。


【慧くんのお父さんとお母さんがいなかったら、わたしは今頃慧くんと出会えていなかったと思うと、一堂さんたちには感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます!】


 こんなふうに感謝の気持ちを伝えられる依茉は、本当にすごい。


 依茉の手紙を読み、俺は目を細める。


「ていうか母さん。迷惑って言いながらも、依茉からの手紙、捨てずに置いてあるんだ?」

「えっ、ええ。最初は全く目を通さなかったんだけど。彼女が、あまりにもしつこく手紙を送ってくるものだから。仕方なく読んでみたら、私やお父さんの知らない慧さんのことがたくさん書かれていて……」


 母が、依茉の手紙に視線を落とす。


「一度それを見てしまったら、手紙を捨てるなんてことは出来なかった。ここ数年は、慧さんから学校の話を聞くこともすっかりなくなっていたから。手紙で慧さんの様子を知れるのは、親としては嬉しくて。いつしか、依茉さんからの手紙が楽しみになっていたわ」


 母さん……。


「若いのに、今どき手紙だなんて……ほんと珍しい子ね」


 便箋を手に、母が微笑む。


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