イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 それからは、可愛いペンギンたちに癒されたり。イルカショーを見たり。


 館内のカフェで七夕限定のドリンクを飲んだりして、慧くんとの水族館デートをめいっぱい楽しんだ。


 * * *


 慧くんと水族館を出ると、辺りはすっかり日が暮れ、夜空には星が瞬いていた。


「帰る前に、行きたいところがあるんだけど……良い?」


 慧くんにそう言われてやって来たのは、水族館の近くの海だった。


 ──ザザァッ……。


 辺りには、打ち寄せる波の音が絶え間なく響く。


「わたし、海なんて久しぶりに来たよ」

「俺も」


 わたしは、慧くんと手を繋ぎながら砂浜をゆっくりと歩く。


 潮の香りが、ふわっと鼻を掠めて。


 時折、潮風に髪の毛がなびく。


 真っ暗な夜の海は初めて来たけど、なんだか新鮮だなぁ。


 わたしたち以外、ここには誰もいなくて。


 まるで、二人だけの世界みたいに思える。


 藍色の空一面にキラキラと輝く星々を、しばらく見つめていると。


「依茉」


 少し緊張したような声で、名前を呼ばれた。


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