イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
背後から声をかけられ、振り向くと。
「うわ……」
わたしの後ろには、今一番会いたくない人が立っていた。
「一堂先輩……」
「やっぱり思ったとおり、依茉ちゃんだ。やあやあ、さっきぶりだねー!」
「なんで先輩がここにいるんですか?」
「なんでって。いま彼女とデートでカラオケに来てて。俺は飲み物を入れにきたんだけど」
彼女とデート……ねぇ。
わたしの脳裏には、今日教室で一堂先輩と話していた2年生の巻き髪先輩の顔が浮かんだ。
「依茉ちゃんは? 友達とカラオケ?」
「……」
一堂先輩が人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてくるけど、わたしは無視して杏奈の分のココアを入れる。
「依茉ちゃん、なんで無視すんの〜?」
「そんなの、先輩と関わりたくないからに決まってるじゃないですか」
「えっ、“ 依茉ちゃん ” ってもしかして……西森さん?!」
うそ。この声は……。
先輩と話していると名前を呼ばれ、恐る恐るそちらに目をやると。
「こ、小林くん……!」
ドリンクバーの近くに、わたしが中学3年間ずっと片想いしていた小林くんが立っていた。