イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
学ランの男子が2人、こっちに向かって歩いてくるなとは思っていたけど。まさか、そのうちの1人が小林くんだったなんて。
小林くんは中学卒業後、わたしとは違う高校に進学することが決まっていたから。
小林くんと会うのは、わたしが春休みに彼に告白して振られたあの日以来だ。
別々の高校に進学したら、もう会うこともないだろうと思っていたけど。
まさか、こんなすぐに再会するなんて。
「うわ、やっべー」
わたしの顔を見るなり、気まずそうにわたしから顔をそらす小林くん。
そんな彼の様子に、胸がズキッと痛む。
『悪いけど……俺、西森さんのことは正直そんなふうに見たことがなくて。だから、ごめん』
彼を前にすると、振られたあの日のことを鮮明に思い出してしまってまた泣きそうになる。わたし、失恋からまだ全然吹っ切れてない。
「なあ。どうしたんだよ、辰樹。急に暗い顔して……」
「いや、ちょっと……俺、部屋に戻ろうかな」
「は? ドリンクいらないのかよ?」
ドリンクバーに来たところだというのに、小林くんが飲み物も入れずにカラオケルームに戻ろうとする。
きっと、わたしのせいだよね。
さっきから小林くんの表情は、ずっと暗くて。
小林くんにそんな顔をさせてしまうくらいなら、告白なんてしなきゃ良かったかな。
ごめんなさい、小林くん。
告白してしまって、ごめんなさい……。