イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「依茉ちゃんは、俺の彼女だから。俺以外の男と連絡先の交換なんて、絶対にダメ」
はい!?
「彼女……?」
小林くんの眉が、ぴくりと動く。
「ちょっと、先輩!? 彼女ってさっきから何を……んっ」
わたしは、一堂先輩に言葉を奪われるかのように口づけられてしまった。
……え、うそ。わたし今、先輩と……。
先輩とのキスは、ほんの一瞬だったけど。触れた唇は柔らかくて、シトラス系の爽やかな香りがした。
「うわ。こんなところでキスするなんて。見せつけてくれるねぇ。彼氏持ちなら、連絡先は別にいいや」
「……へぇ。失恋して間もないのに、もう新しい彼氏だなんて。西森さんって、切り替え早いんだね」
冷たくそう言うと、飲み物も入れずに小林くんは友達と歩いて行ってしまった。
「ちょっ、ちょっと小林く……」
「あーあ。行ってしまったね、小林クン」
どこか他人事のような一堂先輩を、わたしはきつく睨みつける。