イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「なっ、なっ……!」
「やっほー、依茉ちゃん。今日はよく会うね」
だってそこにいたのは、クラスメイトの一堂慧だったから。
「なっ、なんで、先輩がウチに!?」
「なんでって。俺、怜央の友達だから。遊びに来たんだよ」
「ええっ、一堂先輩がお兄ちゃんの友達!? 冗談でしょ……っうわあ」
びっくりしすぎて、わたしの持っていたトレイが傾き、コップとお皿が床に落ちそうになってしまう。
「あっぶねえ」
すんでのところで一堂先輩がコップとお皿を支えてくれたので、事なきを得た。
一堂先輩、すぐに反応して駆けつけてくれるなんて。すごい瞬発力……。
「大丈夫? 依茉ちゃん。驚きすぎだよ」
だって、授業をサボって留年したうえに、彼女を取っかえ引っ変えしているクズの代表みたいな人が、真面目なお兄ちゃんの友達だなんていうから。
「冗談じゃないよ、依茉。慧は、兄ちゃんが花城学園中等部に通ってた頃からの親友だ。同じバスケ部だったしな」
「へぇー」
あの一堂先輩が、お兄ちゃんの親友だったなんて。しかもバスケ部って、意外すぎる。
「では、わたしはこれで。一堂先輩、どうぞごゆっくり」
黒のローテーブルにジュースとお菓子を置くと、わたしはお兄ちゃんの部屋を出ていこうとしたのだけど。
「待って、依茉」
わたしは、お兄ちゃんに引き止められてしまった。
「依茉に、大事な話があるんだ」