イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 そんな二人の様子に、見ているこちらが恥ずかしくなってくる。


 さっきから一体何を見せられているんだろう、わたしは。


「最悪……」


 自分が失恋した直後に、カップルが仲良くするところなんか見たくないよ。


 振られたわたしのことを笑っておいて、自分は彼女とデートだなんて。


 しかも、失礼男と抱き合っているハルカちゃんって子は、お人形さんみたいにすっごく可愛くて。高身長でスタイルも良くて……バストもある。


 チビで、寸胴体型のわたしとは大違い。


 男の人って、やっぱりハルカちゃんみたいな子が好きなのかな……小林くんも。


 わたしもハルカちゃんみたいに魅力的だったなら、小林くんに振られることもなかったのだろうか。


「うぅ、小林くん……っ」


 小林くんのことなんて考えたくないのに。わたしの頭には、小林くんの優しい笑顔が浮かんでしまう。


 小林くんは、人のことを笑うようなあの人とは違って。黒髪短髪で見るからに真面目で、優しい人だった。



 ───小林くんとの出会いは、わたしが中学に入学して間もない頃。


 移動教室の場所が分からなくて、廊下で困っていたわたしに声をかけてくれたのが、小林くんだった。


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