イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


「は……?」


 間抜けな声を出したのは、一堂先輩。


「俺が、依茉ちゃんの彼氏?」

「ああ」

「怜央……冗談だろ?」


 フッと鼻で笑う先輩。


「そっ、そうだよ。一堂先輩が、彼氏だなんて。何を言ってるのお兄ちゃん!」

「……冗談じゃない。俺は、真面目に話している」


 お兄ちゃんは、終始とても真剣な目をしていて。

 冗談じゃないと分かったのか、ずっと胡座をかいていた一堂先輩もその場に正座する。


「依茉、今日クラスの男と一緒にカラオケに行ったんだって?」


 お兄ちゃんに聞かれて、わたしは肩がビクッと跳ねる。


「しかも、そのカラオケで他校の男に、連絡先を聞かれたそうじゃないか。今朝、あれほど気をつけろと言っていたのに……」


 なっ、なんで、それをお兄ちゃんが知ってるの。


 一堂先輩のほうを見ると、すぐに目をそらされた。


「慧からその話を聞いたら、兄ちゃんもう心配で心配で。もし依茉が変な男に目をつけられて襲われでもしたら、死んだ父さんに顔向けできなくなる」


 窓の外の夕焼け空を、じっと見つめるお兄ちゃん。


「だから、兄ちゃんは考えた。慧に、依茉の男避けになってもらえばいいんだと」


< 41 / 295 >

この作品をシェア

pagetop