イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「は……?」
間抜けな声を出したのは、一堂先輩。
「俺が、依茉ちゃんの彼氏?」
「ああ」
「怜央……冗談だろ?」
フッと鼻で笑う先輩。
「そっ、そうだよ。一堂先輩が、彼氏だなんて。何を言ってるのお兄ちゃん!」
「……冗談じゃない。俺は、真面目に話している」
お兄ちゃんは、終始とても真剣な目をしていて。
冗談じゃないと分かったのか、ずっと胡座をかいていた一堂先輩もその場に正座する。
「依茉、今日クラスの男と一緒にカラオケに行ったんだって?」
お兄ちゃんに聞かれて、わたしは肩がビクッと跳ねる。
「しかも、そのカラオケで他校の男に、連絡先を聞かれたそうじゃないか。今朝、あれほど気をつけろと言っていたのに……」
なっ、なんで、それをお兄ちゃんが知ってるの。
一堂先輩のほうを見ると、すぐに目をそらされた。
「慧からその話を聞いたら、兄ちゃんもう心配で心配で。もし依茉が変な男に目をつけられて襲われでもしたら、死んだ父さんに顔向けできなくなる」
窓の外の夕焼け空を、じっと見つめるお兄ちゃん。
「だから、兄ちゃんは考えた。慧に、依茉の男避けになってもらえばいいんだと」