イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「そっか。依茉ちゃんに、昔そんなことがあったんだ。そりゃあ、怜央も心配になるよな」
「ああ。いくらなんでも慧に虫除けになってとか、無茶なことを言ってるって自分でも分かってるけど。依茉は俺にとって、たった一人の大切な妹だからな」
「俺には兄弟がいないから、よく分からないけど。そこまで思える存在がいるのって、なんか良いな」
一堂先輩が、ふわりと微笑む。
「……よし、分かったよ」
え?
「そういうことなら俺、引き受けても良いよ。依茉ちゃんの恋人役」
「慧、本当か!? いやぁ、そうしてもらえると助かるよ。サンキュ」
お兄ちゃんが笑顔で、一堂先輩の手を握りしめる。
「慧がOKしてくれたんだ。依茉もいいだろ?」
「……分かったよ」
そもそもお兄ちゃんは、わたしを思って言ってくれたことなんだし。
一堂先輩も、こんな面倒なことをせっかく引き受けてくれたんだから。
嫌でも、わたしに断る権利なんてない。
「それじゃあ、さっそく今日から開始ってことで。あと確認だけど、あくまでも恋人のフリだけで良いから。もちろん、キスもハグも禁止な?」
「分かったよ、怜央」
お兄ちゃんからキスもハグも禁止だと言われて、わたしは胸を撫で下ろす。
「いやぁ。慧が依茉の近くにいてくれるって思うと、俺も安心だ……あっ、わりぃ。バイト先から電話がかかってきた。俺、ちょっと抜けるわ」
お兄ちゃんがスマホを手に部屋から出ていき、わたしは一堂先輩とふたりきりになる。