イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
お兄ちゃんに、一堂くんと仮のカップルになるように言われてからもうすぐ1週間になる。
その間、わたしは一堂くんと恋人っぽいことは何もしていないし。そもそも一堂くんが我が家に来たあの日以来、彼とは会話すらしていない。
あのとき、お兄ちゃんの部屋で一堂くんに『これからは俺の彼女として、たーくさん可愛がってあげるから』なんて言われたけど。
やっぱり、からかわれただけだったのかも?
まあ、元々は “ 付き合うフリ ” だけの約束だし。このまま何もないほうが、わたしにとっても都合がいいかな。
* * *
翌日の昼休み。
「依茉! ご飯食べよう」
「うん! あー、もうお腹ペコペコ〜」
わたしはいつものように、杏奈と真織と机を合わせてお弁当を広げる。
「わぁ、依茉ちゃんの卵焼き美味しそう!」
「良かったら、ひとつ食べる?」
「うん! それじゃあ、私のハンバーグと交換しよう」
わたしが、杏奈とそんな話をしていたときだった。
「本当だ。その卵焼き、すごく美味しそうだね」
突然わたしたちに、話しかけてきた人がいた。
「えっ、一堂先輩!?」
いきなり現れた一堂くんに、真織が素っ頓狂な声をあげる。