イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
一堂くんに手を引かれながらやって来たのは、中庭だった。
中庭には大きな噴水があって、その周りを取り囲むように設置されている花壇には色とりどりの花が咲いている。
今日はいいお天気だからか、中庭のベンチはどこも人でいっぱいだ。
「あっ。あそこ、空いてる」
ひとつだけ誰も座っていないベンチがあったので、わたしは人が1人座れるスペースを空けて座る。
「依茉、なんでそんなに離れて座るの?」
「なんでも何も……」
単純に、一堂くんとあまり近づきたくないから。この前みたいに、またいきなりキスされたら嫌だし。
それに……。中庭にいる人たちが、さっきからチラチラとこっちを見てくるんだよね。
「1年生が慧くんと一緒にいる〜」
「もしかして、新しい彼女かな?」
そんな声も聞こえてくる。
「ただでさえ、さっき一堂くんに教室でみんなの前で『付き合ってる』って言われて。教室から中庭までも手を繋いで歩いてきたから。これ以上、変な噂がたって欲しくなくて」
わたしはもう少し離れようと、反対側に腰をずらす。
「変な噂がたって欲しくないって……学校のみんなに、俺らが付き合ってるって思ってもらわなくちゃ意味ないだろ? でないと、依茉の男避けにならないじゃない」
そう言うと、一堂くんは距離をつめてくる。