イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 それからしばらくして、わたしがお弁当を食べ終える頃。


「あれ? ミニトマトだけ残して……もしかして、依茉ってトマト苦手?」


 わたしの空になったお弁当箱に、ミニトマトだけがひとつ、ぽつんとあるのを見て一堂くんが聞いてくる。


「いや。トマトは好きだよ? わたし、好きなものは最後に食べる派なんだよね」


 わたしはミニトマトを手で摘むと、口の中にポイッと入れる。


「んーっ、美味しい」

「えっ、うそ。好きなの!? なんだー。依茉もてっきり、俺と一緒でトマトが嫌いなのかと……」


 そういえば一堂くん、サンドウィッチに挟んであったトマト、食べずに残していたな。


 一堂くんのほうに目をやると、彼が食べていたサンドウィッチの包み紙には、トマト一切れだけが手つかずのまま。


「一堂くんって、トマト嫌いなの?」

「うん。俺、トマトってどうも苦手なんだよね」

「どうして? 美味しいのに。残したら勿体ないよ」

「食べ物を粗末にしたら、ダメなのは分かってるんだけど。どうもトマトの食感とか味が、昔から苦手で……」

「そうなんだ。トマトが苦手だなんて。一堂くん、年上なのに子どもみたい。ふふっ」


 これは、一堂くんの意外な弱点を発見しちゃったかも?


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