イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「うわ……トマトなんて食ったの、小学生以来だけど。やっぱりこの味は、まだちょっと苦手だわ。ゴホッゴホッ」
トマトを飲み込んだあと、紙パックのカフェオレをごくごくと一気飲みする一堂くん。
彼の薄茶色の瞳が、ほんのりと涙目になっている。
「だっ、大丈夫!? 一堂くん」
まさか、トマトを食べるなんて思わなかった。
「ゴホッゴホッ……!」
「な、なんで食べたの!? むせるくらい苦手なら、無理して食べなくても良かったのに」
わたしは、咳き込む一堂くんの背中をさすってあげる。
「だって、依茉がトマト好きだって言うから」
「え?」
「依茉が、あんなに嬉しそうにトマトについて喋るから。残すなんて出来ないって思った。やっぱり、自分の彼女が好きな食べ物は好きになりたいじゃない?」
“ 彼女 ” って。わたしは彼女といっても、仮の彼女なのに……。