イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「うーん、そうだなぁ。あっ! 依茉から俺にキス……とか? もちろん濃厚なやつね」
「キッ、キスって! だったら一堂くん、トマトなんて一生克服しなくて良いから」
「ええ。ひどいなぁ、依茉ちゃん〜」
トマトが苦手だったり、褒めてって言ってきたり。
一堂くんはわたしよりも1歳年上のはずなのに、全然先輩らしくない。
「じゃあキスがダメなら、さっき言ってたトマトの甘酢漬けだっけ? それを作って欲しいな」
「え?」
「俺、食べたことないから。一度食べてみたくって。それって、どんな料理?」
「えっと。砂糖とお酢と塩を混ぜたものに、皮を剥いたトマトを漬けておくんだけど。甘酸っぱくて美味しいの」
「へぇ。知らなかったな。それじゃあ俺、まじで頑張るから。いつか本当に作ってくれよな」
いつか……。
もしかしたらその頃には、今のこの仮のカップルの関係は終わっているのかもしれないけど。
「うん。いつかね」
なぜかこのときわたしは、一堂くんの喜ぶ顔が見たいと思ってしまった。