イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


「うーん、そうだなぁ。あっ! 依茉から俺にキス……とか? もちろん濃厚なやつね」

「キッ、キスって! だったら一堂くん、トマトなんて一生克服しなくて良いから」

「ええ。ひどいなぁ、依茉ちゃん〜」


 トマトが苦手だったり、褒めてって言ってきたり。


 一堂くんはわたしよりも1歳年上のはずなのに、全然先輩らしくない。


「じゃあキスがダメなら、さっき言ってたトマトの甘酢漬けだっけ? それを作って欲しいな」

「え?」

「俺、食べたことないから。一度食べてみたくって。それって、どんな料理?」

「えっと。砂糖とお酢と塩を混ぜたものに、皮を剥いたトマトを漬けておくんだけど。甘酸っぱくて美味しいの」

「へぇ。知らなかったな。それじゃあ俺、まじで頑張るから。いつか本当に作ってくれよな」


 いつか……。


 もしかしたらその頃には、今のこの仮のカップルの関係は終わっているのかもしれないけど。


「うん。いつかね」


 なぜかこのときわたしは、一堂くんの喜ぶ顔が見たいと思ってしまった。


< 59 / 295 >

この作品をシェア

pagetop