イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「……っ!?」
「依茉は、優しいんだな」
「え? これくらい、別に普通じゃない?」
今までも、道端で落とし物を見かけたら拾って交番に届けたりもしていたし。
「ううん。普通は、わざわざ教室を聞いてまわってまではしないと思う。さっきのトマトのことと言い、俺の周りには依茉みたいな子って、なかなかいないから。……やっば。まじで惚れそうなんだけど」
『依茉みたいな子って、なかなかいないから』のあとの言葉がよく聞こえなくて、わたしは首を傾ける。
「ねぇ、そのハンカチ俺に貸して」
一堂くんはハンカチをわたしから受け取ると、それをスマホのカメラで撮影する。
「俺も協力するよ」
「えっ、いいの?」
「うん。だってこの学校1学年10クラスあるのに、依茉一人で聞いてまわるとか大変だろ? 俺はこの写真を見せて、聞いていくわ」
「あっ、ありがとう」
「見つかったらすぐに連絡するから。依茉の連絡先、教えてくれない?」
「分かった」
わたしが、一堂くんとスマホの連絡先を交換したとき。
「あれー? 慧じゃない」
中庭を歩いていた2年生の派手な女子3人組が、一堂くんに話しかけてきた。