イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


「ありがとう、一堂くん。手伝ってくれて」


 ハンカチを届けたあと、わたしは一堂くんと並んで廊下を歩く。


「わたし一人だったら、今もまだ持ち主を見つけられていなかったかもしれない。だから、ありがとう」

「全然。依茉が、知らない誰かのためにも一生懸命だったから。俺も協力したいなって思ったんだよ」


 一堂くんの手が、わたしの頭に優しく置かれる。


「本当に優しい子だよな、依茉は」

「……っ」


 一堂くんにくしゃくしゃと頭を撫でられ、その手のぬくもりと笑顔に不覚にもときめいてしまう。


「依茉ちゃん、いい子いい子。えらいねぇ」

「……あの。その言い方、なんか子供扱いしてない?」

「だって、子供だろ? その体型だし……そこも、全然成長してないみたいだし?」


 一堂くんがわたしの胸のほうに目をやり、ニヤリと口角を上げる。


 もう、この人はまた失礼なことを言って……!


「まあ俺は、今日の放課後にさっきの女子たちと遊ぶ約束もできたし。ハンカチの持ち主も見つかったしで、一石二鳥だよ〜」


 あっ、そうか。一堂くん、さっきの2年生の先輩たちと遊ぶんだ。


 付き合ってる彼女以外の子とも遊ぶなんて、相変わらずだな。


「ああ、放課後が楽しみだなぁ」

「……っ」


 一堂くんが女の子にだらしないのは前からのことだし、そもそも一堂くんはわたしの本当の彼氏じゃないのに。


 彼が他の女の子と遊ぶんだなって思うと、胸の辺りが少しだけモヤッとした。


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