イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「キャーッ」
教室には、複数の女子の悲鳴にも似た声があがる。
「ち、ちょっと、ここ教室だよ!?」
わたしが彼から慌てて離れようとするも、腰にまわされている一堂くんの手に力が込められてしまって離れられない。
「あのさ。分かってると思うけど……」
一堂くんの艶やかな薄い唇が、わたしの耳へと近づく。
「仮にでも依茉は、俺の彼女なんだから。俺以外の男と、あんまり仲良くしたらダメだよ」
後ろから耳元に囁かれて、背筋がゾクリとする。
な、仲良くって……。わたしはこれから、三原くんとただ委員会に行くだけなのに。
「分かった? 依茉」
「……っう、うん」
耳に吹きかけられた息がくすぐったくて、ぴくりと肩が揺れる。
「慧ーっ。そんなところで何やってるの? 早く行くよー」
「ああ。今行く」
わたしの体から一堂くんの手がするりと離れ、彼は廊下にいる2年生の先輩女子のもとへと駆けていく。
自分はこれから、昼休みに約束していた2年生の先輩たちと遊びに行くくせに。
どうしてわたしに、あんなことを言ったの?