イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない

◇まさかの再会



 失恋から10日が経った4月上旬。


「おい、依茉。早くしないと、学校に遅刻するぞ」

「待ってよ、お兄ちゃん」


 朝の7時半過ぎ。わたしはネイビーのブレザーを羽織りながら、慌てて1歳年上の兄・西森怜央(れお)のあとを追って玄関を出る。


 今日は、私立花城(はなしろ)学園高校の入学式。


 と言っても、花城学園は中高一貫校だから。
 わたしは、中等部から高等部への持ち上がりなんだけどね。


「あれ? 依茉、制服のリボンは?」


 お兄ちゃんに言われて視線を下にやると、白のブラウスの襟元には何もついていなかった。


「ああっ! 急いでたせいで、リボン忘れちゃった」

「何やってるんだよ。依茉は、そそっかしいなぁ」

「ごめん。うっかりしてた」


 わたしは、頭を自分の拳でコツンと軽く叩く。


「ああ、もう。まじ可愛いなぁ……依茉ちゃん」


 お兄ちゃんが、顔を手で押さえている。


「しょうがない。兄ちゃんが、リボン取ってきてやるよ」


 そう言って、お兄ちゃんが家の中へと戻る。


「ほら。依茉、リボン」


 お兄ちゃんが、制服の赤のリボンを持ってきてくれた。


「ありがとう、お兄ちゃん……!」


 わたしが受け取ろうとすると、お兄ちゃんにリボンをわたしの頭上よりも高く上げられてしまった。


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