α様は毒甘な恋がしたい
ラット暴走
美心side
☆美心side☆
……ズルい。
そんな言葉を口にしたら、戒璃くんに嫌われちゃうのかな?
上昇するエレベーターの中。
狭い密室空間にいるのは、私と戒璃くんの二人だけ。
私の手首は今、大好きな熱でやけどしそうになっている。
戒璃くんは私の隣に立っているにもかかわらず、視線を合わせはくれなくて。
貝みたいに口をきつく閉ざしていて。
彼が無表情のままじっと見つめているのは、エレベーター上部に光る【↑】表示。
ぞんざいに扱われているような気がして、鼻がしらがツーンとうずく。
ほんと、戒璃くんはズルい。
近くにいるだけで、私の心臓を無駄に跳ねさせてくる。
完全に拒絶してくれれば。
ただの先輩後輩の距離感で接してくれれば。
複雑な恋心を、捨てさる覚悟ができるのに。