α様は毒甘な恋がしたい


 部屋のドアを閉め、なぜか鍵を回しかけ、ブレザーから袖を抜いた戒璃くん。


 「そこのソファに座っていて」


 脱いだばかりのブレザーを、私に託すように投げると


 「資料庫から書類を取ってくるから」


 無表情のまま部屋奥に進み、ドアを開け中に消えてしまった。


 言われた通り、私は4人掛けのソファの真ん中に腰を下ろす。



 私の心臓をいじめてくるのは、キュンキュンともドキドキとも違う、ザラザラした痛み。

 痛みをごまかしたい私は、鎮痛剤がわりに抱えていた戒璃くんのブレザーに顔を押し当てた。



 はぁあぁ~~。

 なんで人の心って、いろんな感情が絡み合っちゃうのかな?



 転入生として、生徒会長に従わなきゃ!

 生まれる感情が生徒としてのものなら、心臓がねじれそうなほど痛まないはず。



 「好き」「大好き」「愛してる」

 LOVEの3段活用に脳内が支配されていれば、大人気スターを独り占めできる贅沢なこの時間を、神様に感謝しているはず。
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