α様は毒甘な恋がしたい
資料室のドア後ろに隠れたままの俺。
ドアに手をつき
「はぁ……」
心の痛みを重い溜息に溶かし捨てる。
力なく落ちてしまう表情筋を、無理やり押し上げる気力がわかなくて。
陰る目でただただ見つめてしまうんだ。
ソファに座りながら俺のブレザーに顔をうずめる、大好きな美心の姿を。
美心は俺にとって、初恋のオメガだ。
俺の瞳には今もなお、愛おしく映っている。
それなのに、彼女を見ているだけで苦しい。
針山に押し当てられたように、心臓がギリギリと痛みだし。
愛してる以外の醜い感情に、俺のハートがどす黒く塗りつぶされてしまうんだ。
なぜアルファしか入れない高校に、美心がいるの?
なぜ俺以外のオスフェロモンが、美心の体中にベタベタに塗りたくられているの?
双子アイドルの恋人だというのは本当なの?
雷斗と風弥に溺愛される甘い生活を、毎日送っているの?