α様は毒甘な恋がしたい

 資料室のドア後ろに隠れたままの俺。

 ドアに手をつき

 「はぁ……」

 心の痛みを重い溜息に溶かし捨てる。



 力なく落ちてしまう表情筋を、無理やり押し上げる気力がわかなくて。

 陰る目でただただ見つめてしまうんだ。

 ソファに座りながら俺のブレザーに顔をうずめる、大好きな美心の姿を。




 美心は俺にとって、初恋のオメガだ。

 俺の瞳には今もなお、愛おしく映っている。


 それなのに、彼女を見ているだけで苦しい。

 針山に押し当てられたように、心臓がギリギリと痛みだし。

 愛してる以外の醜い感情に、俺のハートがどす黒く塗りつぶされてしまうんだ。



 なぜアルファしか入れない高校に、美心がいるの?

 なぜ俺以外のオスフェロモンが、美心の体中にベタベタに塗りたくられているの?

 双子アイドルの恋人だというのは本当なの?

 雷斗(らいと)風弥(かざみ)に溺愛される甘い生活を、毎日送っているの?

< 181 / 570 >

この作品をシェア

pagetop