α様は毒甘な恋がしたい


「クリーニングなんていい」

「えっ?」

「そのまま返してくれればいいから」

「……でも」

「返して!」




 イラつき顔の戒璃くんに、ブレザーを奪い取られちゃった。

 拒絶するように私に背を向け、ブレザーに袖を通している。



 戒璃くんは私のことなんて、全く覚えていないんだよね?

 それなら私は、勘違いされているのでは?

 会ったこともないファンに、私物を盗まれそうになったって。



 弁解したいけど……

 戒璃くんは部屋の奥に歩いて行っちゃったか。

 怖い魔王様みたいに、目を吊り上げたままで。



 は~~~。

 ほんと悲しいな。


 首を噛んだ私のことを、戒璃くんが全く覚えていないことも。

 番のフェロモンに惑わされてしまうのが、私だけという現実も。

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