α様は毒甘な恋がしたい


 本当にいきなりだった。

 予想外だった。


 グワンと沈みこんだソファ。

 私の体が少しだけ傾き、そのまま視線を右に。


 紫を溶かしたようなサラサラ髪が目に入り、ドキリ。

 肩がぶつかりそうなほど近くに戒璃くんが座っていて、バクバクバク。

 私の心臓が無駄にきしむ。



 長い足を組んでいると、本物の王子様みたいだな。

 『お城でくつろぎ中です』と吹き出しをつけ、優雅に紅茶を飲んで欲しい。


 はぁ~

 微笑む推しを拝みながら変な妄想に走るクセ、何とかしなきゃな……って。



 ほっほほ、微笑んでる? 

 私に向かって?


 おかしい、おかしい!

 さっきまで戒璃くんは、不機嫌そうに眉を吊り上げていたのに。

 今は私の顔を見て、ニコニコなんて。
< 196 / 570 >

この作品をシェア

pagetop