α様は毒甘な恋がしたい


 ただ……

 大好きな人に大事なことを伝えるチャンスは、これが最後なのかもしれない。

 私の願いはただ一つなの。

 ――戒璃くんのこの先の人生が、私なんかのせいで狂いませんように。

 そのために、今私ができることは……


 覚悟を決め、私はこぶしをぎゅっと握りしめる。

 目をつぶり、叫び声を生徒会室に響かせた。



「かっ、戒璃くん! 私たちの番関係を、断ち切らせてください!」




 戒璃くんには、私以外にもたくさんの番がいる。

 首を噛んだことすら覚えていないくらい、私に興味がない。

 それなのに――

 学園ですれ違うたびに、私のフェロモンに惑わされてしまうなんて、戒璃くんが可愛そうすぎるもん。

 私の中から戒璃くんの記憶がなくなってしまうのは、悲しくてたまらないけど。

 大好きな戒璃くんの幸せを考えたら、番関係を断ち切ることが最適解でしょ?

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