α様は毒甘な恋がしたい


 正しい判断だとわかっている。

 でも縁切り宣言を口にした直後、つま先から震えが駆けあがってきた。

 好きな人とのつながりがなくなってしまうのが、悲しくてたまらなくなってきた。


 後悔なんかしちゃダメ。

 大好きな人の幸せのためだもん。

 戒璃くんに辛い思いはして欲しくない。

 今までみたいに、スポットライトがまぶしいステージの上で、きらっきらな蜜甘スマイルをファンに飛ばして欲しい。


 そのためには、オメガの私は邪魔者で……

 私の初恋は、捨て去らないとダメで……

 でも、大好きでたまらなくて……



 涙腺が緩みそうになって、涙が製造されそうになって、血がにじんだままの左手の薬指に歯を押し当てた私。


「ったくもう、これ以上自分を痛めつけんなって。見てらんねーし」


 指に痛みが走らないようにと、雷斗さんが私の手を掴み口元から遠ざけてくれた。

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