α様は毒甘な恋がしたい


「ごめんね……今まで俺のエゴで縛り付けて……」



 えっ?

 戒璃くん、今のってどういう意味?




「最後にもう一つだけ」と、せつない声をもらした戒璃くん。

 私の耳に形のいい唇を近づけた。



「美心だけじゃないよ。大事な思い出を、キラキラなシャボン玉の中に閉じ込めているのは」



 それって……



「行くぞ、美心」


 待って雷斗さん。

 私の腕を引っ張らないで。


 戒璃くんは、2年半前のことを覚えているの?

 私と過ごした思い出を、大切にしてくれているの?


「マネージャーが学園まで迎えに来ます。今から病院に行きましょうね、美心」


 お願い。

 戒璃くんと話をさせて。

 私の中から、戒璃くんの記憶がなくなる前に。

 膨らみ過ぎた彼への恋心が、シャボン玉のように消えてしまう前に。

< 238 / 570 >

この作品をシェア

pagetop