α様は毒甘な恋がしたい
「ごめんね……今まで俺のエゴで縛り付けて……」
えっ?
戒璃くん、今のってどういう意味?
「最後にもう一つだけ」と、せつない声をもらした戒璃くん。
私の耳に形のいい唇を近づけた。
「美心だけじゃないよ。大事な思い出を、キラキラなシャボン玉の中に閉じ込めているのは」
それって……
「行くぞ、美心」
待って雷斗さん。
私の腕を引っ張らないで。
戒璃くんは、2年半前のことを覚えているの?
私と過ごした思い出を、大切にしてくれているの?
「マネージャーが学園まで迎えに来ます。今から病院に行きましょうね、美心」
お願い。
戒璃くんと話をさせて。
私の中から、戒璃くんの記憶がなくなる前に。
膨らみ過ぎた彼への恋心が、シャボン玉のように消えてしまう前に。