α様は毒甘な恋がしたい
89盗姫の秘め事
☆孝里side☆
「ねぇ、戒ちゃん!」
夜9時。
89盗の3人で住んでいる寮の地下スタジオで。
「ギター、暴れすぎなんだけど!」
ドラムを叩き、ほっそい体から文句を吐き出す僕。
十守 孝里、高校2年生。
僕のことは『こうちゃん』って、気軽に読んでね。
テヘっ! ペロっ!
……なんて、キュートに舌を出している場合じゃなかった。
「ちょっとちょっと! 僕のドラムを無視して突っ走っりすぎ! 戒ちゃん何? 僕に怒ってるの?」
僕の甲高いお姫様ちっくな叫び声なんて、ギターを鳴らす戒ちゃんの耳はに届いてない。
心ここにあらず。
戒ちゃんは指をいじめるように、ビュインイビュイン音を暴れさせている。
はぁあぁぁ~
人格変わるくらい荒れるなら、頼りがいのあるもう一人のバンドメンバーがいる時にしてよ。
人の心を癒すプロなんだから。
【いのりん】こと九重祈は。