α様は毒甘な恋がしたい
89盗姫の秘め事


 ☆孝里side☆



「ねぇ、戒ちゃん!」


 夜9時。

 89盗(はくとう)の3人で住んでいる寮の地下スタジオで。


「ギター、暴れすぎなんだけど!」


 ドラムを叩き、ほっそい体から文句を吐き出す僕。

 十守(ともり) 孝里(こうり)、高校2年生。


 僕のことは『こうちゃん』って、気軽に読んでね。

 テヘっ! ペロっ!

 ……なんて、キュートに舌を出している場合じゃなかった。



「ちょっとちょっと! 僕のドラムを無視して突っ走っりすぎ! 戒ちゃん何? 僕に怒ってるの?」



 僕の甲高いお姫様ちっくな叫び声なんて、ギターを鳴らす戒ちゃんの耳はに届いてない。

 心ここにあらず。

 戒ちゃんは指をいじめるように、ビュインイビュイン音を暴れさせている。



 はぁあぁぁ~

 人格変わるくらい荒れるなら、頼りがいのあるもう一人のバンドメンバーがいる時にしてよ。

 人の心を癒すプロなんだから。

【いのりん】こと九重(ここのえ)(いのり)は。


< 241 / 570 >

この作品をシェア

pagetop