α様は毒甘な恋がしたい
「ストップ、ストップ!」
僕はドラムを叩くのをやめ、バチを頭の上で振ってみた。
やっぱりかぁ。
ドラムのドンドンが聞こえなくなっても、まだ弦を弾いてるし。
「もう、やめやめ! ストップだってば!」
僕はわめきながら、ドラムの椅子からピョン。
マロン色のユルふわ髪が、着地と同時にピョピョンピョン。
めんどうくさがり屋の僕がだよ。
わざわざだよ。
戒ちゃんの真横に行って、2本のバチでバッテンを作っているのにさ……
あーあー。
闇ゾーンにつかりすぎじゃない?
戒璃ちゃんの瞳には、僕が映っていないもよう。
怒りを発散するように、体を上下左右に揺らし。
指から血が出ないか心配になるほど、ギターの弦をはじき。
コードを抑える左手なんて、上に下にと弦を高速滑りしまくりで。
目も眉も吊り上げ、泣きそうな顔で唇をかみしめている。