α様は毒甘な恋がしたい
俺は芸能人。
外で人の目が気になってしまうのは職業病。
変装必須と、紫めいたサラ髪を隠すように黒いフードをかぶり
インテリ系眼鏡をかけてはみたものの……
誰も来なそうな公園だな。
変装をする必要はなさそう。
と、思ってしまわなくもないわけで。
でもまぁ、万が一に備えておいた方がいいか。
結局俺は変装を解かず、ベンチに座ったまま長い足を組んだ。
背の高い木々に一周覆われた、この小さな公園。
人間だけじゃなく、野良猫すら通らないのが不思議だ。
ブランコ、滑り台、鉄棒。
子供に人気がある最低限の遊具が、ちゃんと揃っているというのに。
風で揺れる青々とした木々の下。
影が落ちる涼し気なベンチに腰を掛け、俺はギラギラな太陽を見つめ目を細める。
自信過剰すぎる太陽なんて、今の俺にはまぶしすぎなんだけどな。
突然おそわれた自己嫌悪。
ため息が止まらないのは、大切な人への愛し方を間違えていたと気づかされたから。
俺は視線をさげ、緑がツヤめく葉っぱを靴の裏で地面にこすりつけた。