α様は毒甘な恋がしたい

 (つがい)のオメガのフェロモンに充てられたせい。

 ラット状態になってしまったせい。

 なんていうのは、ただの言い訳だ。


 後頭部や顔にキスを降らせ

 ソファに寝そべる美心に覆いかぶさったなんて――

 犯罪以外のなにものでもない。

 俺に襲われかけていた時、美心は恐ろしかったに違いない。

 

 はぁ……

 大好きという感情はなぜ、他人の心も自分の心も痛めつけてしまうのだろう?



 美心を宝物のように愛でたいのに。

 自分の手で幸せにしたいのに。

 俺の中で独占欲が暴れ出して。

 美心の恋熱を唇で確かめたい衝動に、とりつかれたように駆られてしまうんだ。



 もう美心は、俺のものじゃないのにね。


 首を噛んだあの日、俺がみずから手放した宝物で。

 2年半繋がっていた(つがい)という名の赤い糸は、すでにプツりと切れている。


 今はもう、美心は双子アイドルのもの。

 3人の間には、新たな番関係が成立しているんだろう。

< 303 / 570 >

この作品をシェア

pagetop