α様は毒甘な恋がしたい


 孝里が言っていた。

 記憶喪失になったせいで、美心は双子アイドルのことすら忘れてしまっていると。

 でもそれは、たいしたことではない。

 あの双子アイドルは、一途で極甘な愛情を美心に注ぎ続けるだろうし。

 過去を亡くした悲しみなんて、彼らが拭い去ってくれるはず。



 美心、今まで苦しめてごめんね。

 俺のことを綺麗さっぱり忘れられて、心が楽になったかな?


 約束するよ。

 もう二度と、俺から話しかけない。


 生徒会長として関わらなければいけない時は、孝里に伝言を頼むし。

 美心を瞳に映したくなっても、襲ってしまった罪悪感をかみしめ我慢してみせる。



 双子アイドルたちに、幸せにしてもらってね。

 たくさん甘えて、可愛がってもらってね。



 【大好きな人の幸せを願い、身を引くこと】


 それが――


 2年半という長い間

 美心を苦しめ続けてきた俺にできる

 唯一の罪滅ぼしだと思うから。

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