α様は毒甘な恋がしたい
車から俺を追い出した祈に、いら立ちを覚え
うつむきながら、太ももに拳をねじ込んだその時
「……あの」
大好きな声が、頭の上から降ってきた。
……この声は。
吐息まで聞き逃したくなくて、俺の鼓膜に緊張が走る。
「八神戒璃さんですか? アルファ学園の生徒会長の……」
――これは夢なのか?
戸惑いながら視線を上げた先。
ベンチに座る俺の前に立っていたのは、黒髪をサラサラなびかせた女の子だった。
「私、数日前に転入してきた、七星美心というものですが……」
みっみみみみ……美心?
七星美心?!
本物だし。
瞬きも吐息もしているから、人形じゃないし。
いや、どうした?
なにがあった?
なぜこんなところにいるの?