α様は毒甘な恋がしたい

 小1から15歳まで、彼の一番近くにいたから知っている。

 ルキは【裏切り】という行為を、絶対悪と位置付ける男だ。

 残虐魔王が穏やか王子にキャラ変するだけの理由が、今の俺には見つけられない。


 まだ、ルキの言葉を信じてはダメだ。

 とりあえず、美心だけは守らなくては。



 「とにもかくにも、俺は見つけてしまったんだよ。地球破壊なんて比にならないくらいゾクゾクする、最高に面白いオモチャをな」



 最高に面白い……オモチャ……?

 あれ? 

 遠くを見つめるルキの瞳が、俺の大好きな子を捕らえているような……


 「あのオメガは、自分をアルファだと思い込んでいるのだろ? たまんないなぁ」


 ヘビみたいな不気味笑いを浮かべ、舌なめずりをしたルキ。

 残酷な地獄の未来が迫っている気がして、俺はごくりと唾を飲み込んだ。


 「最高に面白いオモチャって……もしかして、美心のこと?」

 「しかも記憶喪失なんて。クククっ。潰しがいがある人間じゃないか」
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