α様は毒甘な恋がしたい
「ハルヒ大好きだよ。バイバイ」
これでもかってほど、甘い声を紡いだ僕。
恋心が届いて欲しくて、ゆるっと微笑んでみた。
「孝くん……バイバイなんて言わないでよ……」
左手の薬指を噛みながら、人生の終わりみたいな顔で泣き崩れるハルヒ。
大好きな子の涙を拭うこともできないなんて。
無力すぎる自分が許せないな、ほんと。
店主は未だ、僕を逆さ吊りにしたままだ。
逃がすまいと言わんばかりの怪力で、僕のしっぽを掴んでいる。
冷静に状況を判断しても、僕が逃げるのは無理だ。
でもハルヒだけは、絶対にこの店から逃がさなきゃ!
今の僕に狙える敵の急所は、ここしかない!
僕は敵意むき出しのまま、大ぞりで体をばたつかせた。
大暴れした結果、店主が慌てだし
――今だ!
僕は尻尾を掴まれたまま、店主の顔に張りつく。
そして野心で濁った彼の瞳に、尖った牙を突き刺した。