α様は毒甘な恋がしたい


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」


 あまりの激痛で、ヨロヨロとよろけながら床に倒れこんだ店主。

 彼が壁にぶつかったおかげで、思いもよらないチャンス到来!


 床に倒れたんだ。

 立て掛けてあった斧が。

 回転しながら斧が床を滑って、なんとかハルヒの手が届くところに。


「ハルヒ、その斧を勢いよく振りろして!」

「斧?」

「目の前にあるでしょ! 自分の足の鎖を切って、今すぐ逃げて! 一人で店から逃げだして!」


 僕は必死に叫んだけれど

 店主に尻尾を掴まれたままの僕が、ハルヒは心配でたまらなかったんだろう。

 顔面蒼白のまま、動けず体を震わせている。


 そのすきに、店主が目をかばいながら立ち上がってしまった。


 燃えたぎらせている怒りと一緒に、僕を頭上まで振り上げ


「クソ珍獣めが!!」


 怒り狂いながら、僕を床に叩きつけると


「お願い、やめて!!」


 ハルヒの泣き叫ぶ声が、悲しみのレクイエムのように響き渡る中


「地獄に落ちろ!」


 店主が振り下ろした斧によって、僕の体は真っ二つになった。


 

 これが僕とハルヒが永遠に引き裂かれた、悲しい前世の思い出だ。



< 408 / 570 >

この作品をシェア

pagetop