α様は毒甘な恋がしたい
「孝里、私の声、聞こえてる?」
女王様っぽいいのりんの呆れ声が、耳に飛び込んできた。
「ねぇ、孝里ったら!」
やばっ。
前世の回想をしていたら、瞳に涙がたまっちゃった!
僕はいのりんに背を向け、こそっと目元を指で拭う。
「ちゃんと渡したサプリは飲んだ?って、私、何回も何回も訪ねてるんだけど」
なんで僕はライブ前のこのタイミングで、前世を思い出してたんだろう?
手に乗せていたサプリ。
いのりんから無性に隠したくなって、手のひらをギュッ。
サプリを握りしめ、僕はほっぺをプクっと膨らませた。
「もう! いのりんのキンキン声、近くで聞くと耳痛ってなるんだからね!」
「ねぇ美心ちゃん、どう思う? 私の声って耳障り? オルゴール並みの癒し声って言ってくれるファンもいるのよ」
いのりんが美心ちゃんに確認を取っている間。
僕は冷静になって、この状況を分析する。