α様は毒甘な恋がしたい


「いのりん……ウソ……だよね?」

「フフフ、そろそろ講堂にいるアルファたちは、理性を飛ばすころじゃないかしら?」

「えっ?」

「もうラット状態になっている生徒もいるじゃない。アルファの欲望に脳が支配されちゃった野獣ちゃんが、どんどん増えているわ。ほら客席を見て。生徒たちが動き出した」


 祈さんが発した言葉の全てが、信じられない私。

 生徒たちが、ラット状態になっているの?

 自分の目で確かめないと、気が済まなくて。

 胸くらいの高さがあるステージにうずくまったまま、恐る恐る客席に焦点を合わせる。


 ……なに……これ


 私の目の飛び込んできたのは、ふらつきながらこっちに歩いてくる大勢の生徒たち。

 まるで生気を吸い取られたゾンビのよう。

 死んだ目で。

 獲物を狙う野獣のような荒々しい呼吸で。

「オメガが欲しい!」

「首を噛ませろ!」

 男女関係なく、ゾンビの大群がステージに押し寄せている。
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