α様は毒甘な恋がしたい

 一体ここは、どこなんだろう?

 窓が一切ない8畳ほどの部屋。

 壁が灰色のコンクリートのせいか、無機質な倉庫みたい。


 部屋の隅に置かれたソファに、私はいま座っていて。

 体を左右に振るくらいしかできないのは、手と足が縄で縛られているから。

 
 視界の隅に映りこんだ、麗しく揺れる赤ピンクのポニーテール。

 女性と見間違うほど麗しい男性は椅子から立ち上がると、ソファに座る私の横に腰を下ろした。


 ひゃっ!

 (いのり)さんだ!

 ついさっき、私をラット状態のアルファの群れに投げ込んだ張本人。



 歓迎会ライブで私が思い出せるのは、そこまで。

 私がポーンと飛ばされた後のことは、何一つ覚えていない。

 手足を縛られた状態で、この部屋に監禁されている理由もわからない。
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