α様は毒甘な恋がしたい


 警戒が膨れ上がり、祈さんから少しでも離れようとする私の上半身。

 どうやらこの部屋から逃げようとするのは、得策ではない。


 両足ぴょんぴょんでドアまで行っても、後ろで縛られたままの手ではドアオープンは不可能だし。

 つまづいて転んでしまったら、腹ばいか転がるしかないし。

 すぐに捕まってしまうだろう。

 祈さんと会話している間に、逃げる方法を考えよう。


 湧き上がる恐怖心。

 なんとか押し殺し、隣に座る祈さんに質問をこぼす。



「私はなぜ、ここにいるんですか?」


 アルファたちの群れに投げ込まれたのに、体に痛みはない。

 制服も乱れてはいない。

 ヒートのせいで動けないほど火照っていた体は、正常をとりもどし。

 首のうしろをさすってみたけれど、アルファに噛まれた跡もない。

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