α様は毒甘な恋がしたい


 声がかれるくらい泣き叫んでも、俺の声に返事をする人なんて誰もいなくて。

 棺桶の外から聞こえてくる大人たちの会話を聞いて 、恐怖で俺の心臓が凍りついた。


『早くこの棺桶を、山の上の神社に運ぼう!』


 山の上の神社に? なんで?



『日が落ちる前に献上する約束だったしな。極上アルファのいけにえを』


 確かに僕は、この村で唯一のアルファだけど……


『この村に生まれた極上のアルファは、神様が聖なる力を維持するための極上ディナーだって言うじゃないか』


 それって僕が、神様に食べられるってこと?!


『人の肉を食らう神なんて、悪魔としか思えねーな』

『バカっ、神様を悪く言うな』

『そうだ。怒ってこの村に災いを落とされたら、たまったもんじゃない。約束通り、丁寧に山の上まで運ぶぞ』

『ああ』



 ちょっと待ってよ。

 食べられるなんてイヤだよ、怖いよ。

 早く、棺桶の中から出してよ!!
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