腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー


 暖の事務所で働きだしてまだ半月だけれど、その間、暖とは四六時中と言っていいほど一緒にいた。


 自分のことより人のことばかり気にして、いつも自分を蔑ろにしている。そんな暖が今、自分の幸せを掴みにいこうとしている。


 私は今、その光景を目にして、体験している。

 これほど嬉しいことはない。

 今までは犬猿の仲で大嫌いな暖だったけれど、今は全く違う視野で暖を見れている。


 心底大嫌いだった人なら、今後どんなことがあっても、どんなことでも許せてしまうような、そんな気がする。そんな人もう嫌いになりようがない。


 後はただただ好きになってしまうだけだ。


『俺と一緒になったら苦労かけさせないし、将来安泰、勝ち組だぞ』

『愛するよりも愛される方が得じゃね?』


 尚人は絶対に言ってくれなかった言葉をくれる、暖はずるい。本当にずるい。

 ――認めたくなかっただけで、私はずっと前から暖に惹かれていたんだと想う。


 暖だったら今後、二人の間で難しい悩みが出てきても、笑って解決してくれる気がする。


 私は暖がお金持ちだから、かっこいいから、ハイスペックでなんでもできるから、ベリが丘に住んでいるから一緒にいたいわけじゃない。


 暖が歩んでいく今後の人生を、一緒に歩いてみたいと思った。


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