腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
8.人生はそんなに甘くない(暖Side)
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俺は今、櫻坂の料亭の個室で尚人とぶーちゃんを待っている。
先に俺の前に姿を現したのは、尚人だった。気のせいか、昨日よりやつれて見える。人は絶望的な環境に立つとこうもやつれてしまうらしい。
「……昨日ぶりで、印鑑を持ってこいと言われるなんて思ってませんでした」
櫻坂の料亭の個室だというのに、全然嬉しそうな顔をしていないのは、当たり前といえば当たり前なのかもしれない。
「今度はいったいなんですか? また俺から金を巻き上げようとしてるんですか?」
こいつは俺のことをヤクザか何かかと思っているんだろうか。
「とりあえず、飯頼めよ。食いながら話すぞ」
メニュー表を見せると、「いや、俺金ないんでいいです」と、精神的に参っている様子の尚人の同意も得ずに、勝手に日替わりコースを二人前で注文した。
「安心しろ。奢ってやるから」
「……で、今日はなんですか」
「ちゃんと式場のキャンセルできたのかなって気になってな」
「できました。二十万円払いましたけど……」
ダメだ。今の尚人は話ができる状態ではない。