腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
今の尚人に和歌との婚姻届けを見せたら、それこそ面倒な言いがかりをつけてきそうだ。
仕方なく鞄から、尚人から受け取った慰謝料を貰った時のままの状態で尚人の前に置いた。
尚人はそれを見ると急いで中を確認し、俺に不安な顔色を見せたまま「これ……」と質問にならない質問を投げかけた。
「和歌から。おまえの今後の生活を考えたら申し訳ないから返すって」
「え……? 慰謝料が欲しかったんじゃ……」
「おまえは和歌がそういう女に見えてたのかよ。まあ、おまえと和歌じゃ大切にしてるものが違うからしょうがねぇな」
そう言うと、尚人は煮え切らない表情をしていた。けれど、どことなくホッとしていて、ある意味正直なヤツだと思う。
「……ほんと、スミマセンでした。俺、今になって和歌の大切さが分かって……」
「金が戻ってきたからって都合良いこと言ってんじゃねぇぞ」
「いや、本当に。俺のこと一番に考えてくれてたし、家賃も俺が半分払えない時とかは支払ってくれたし、色々ねだらないし、本当良い彼女だったなって……あそこまで思ってくれたの和歌が初めてだったのに……あの、俺、和歌とやり直せますかね?」
こいつ、どうしようもないクズだ。
こんな男のどこがそんなによかったのか、疑問しか湧いてこない。