腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
凄く良いことを言っている暖だけれど、
「……彼女と惰性で付き合ってたのに、そこまでできるの?」
いまいち信用できなくて問いかけると、暖は言葉を濁した。
「いや、さすがに惰性で付き合った彼女ならできねぇ。元カノ全員惰性だしな。告られたから断るのも面倒だしなんとなく付き合っただけ」
「それ相手にも凄く失礼だよ」
「……俺が悪いみたいに言うな。元はおまえが悪いんだからな。俺をこんなひねくれた性格にしたのはおまえなんだから」
「おまえだの、惰性だの、なんなのもう! 人に八つ当たりしないで!」
「しょうがねぇだろ! 有栖川って呼びにくいんだよ、なんとかしろ!」
「はあ? じゃあ和歌でもなんでも好きなように呼べばいいでしょ!」
また、本題を忘れて口喧嘩を始める私達に、「暖先生ー、和歌さーん、話逸れてるー」と、手をパンパンと叩きながら真島くんは軌道修正してくれた。
「……とにかく、おま……和歌に俺の事務所の名刺渡しとく」
暖は、自分のズボンのポケットに入れていた名刺入れから、一枚名刺を取り出し私の前に差し出した。
「和歌が尚人と別れる決心ができたら連絡しろ。本来取るはずの依頼費はいらない代わりに、俺はおまえに、金じゃ買えない見返りを求めるから」