腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
2.宝石並みに価値がある弁護士
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――『金じゃ買えない見返り』それが何なのか分からないまま、暖から乾燥機にかけ終えた洋服に着替えるように言われた。
「せめてトランクスは持って帰る」
自分が履いていたものを人に渡すのは気が引けて、私の方で処分しようとしたけれど、『見つかったらおまえが浮気疑われるわ!』と、止められ奪われてしまった。
「ち……ちゃんと捨ててよね!」
「はいはい。こっちで処分しとくから心配すんな」
暖はこの後、依頼の仕事がもう一件入っていると忙しそうにしていた。
暖が望む見返りが何なのかは分からないけれど、私は暖にそんなに大きな見返りを渡すことはできない。
外に出るともう雨は上がっていた。体調も暖と話したからか、朝よりは全然良い。
真島くんに車で送ってもらい、マンションの近くに着いた。「何かあったら気軽に連絡くださいね」と優しい言葉をかけてもらい、車のドアを閉める。
もしかしたらあの女性がまだいるかもしれない。そう思うと、動悸が激しく胸を打ち付ける。
マンションのオートロックを解除し、部屋のドアに手を掛け、深呼吸をし、恐る恐るドアを開いた。
視界に入る玄関には女性の靴はなく、シャワー上がりの尚人が冷蔵庫から炭酸のペットボトルを取り出し美味しそうに飲んでいた。
「和歌、お帰り」
知らない女とあんなことをしていたのに、尚人は何食わぬ顔で私に話しかけてきた。