腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー


 一年後に入籍して結婚式を挙げるはずだったのに、どこから狂ってしまったんだろう。いや、元から少しずつ狂っていたのかもしれない。


 それこそ、尚人が私と体の相性が良くないと思っていた最初から、遅かれ早かれこうなっていたんだと思う。


 何もする気が起きない。洗濯物、この脱ぎ散らかったリビング、明日のご飯の仕込み、ごみ出しの準備。やることは山のようにあるのに力が入らない。

 鞄から暖に貰った名刺を取り出す。


 『東郷弁護士法律事務所』と書かれてあり、暖の名前と、固定電話の番号が書かれてあった。


 仮に浮気されたとしても、尚人と浮気相手が別れてくれれば元に戻れると思っていた。

 けれど、今日、暖に自分の醜さを曝け出したことにより私の心にあった理想が壊れていくのを感じる。

 『有栖川、頑張ってんじゃねぇか』

 尚人にそんなこと言ってもらった記憶はない。

 尚人は優しいけれど、私が頑張っているだなんて思っていない。やって当然だと思ってる。


 暖に言われて、初めて救われた気がした。


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